神奈川県メッキ工業組合

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フェロマスク・K:三価クロムの化成皮膜処理液の長寿命力を助ける添加剤

フェロマスク・K

亜鉛めっきの化成処理

RoHS・ELV指令(ヨーロッパの有害物管理制限)を受けて、 有害な六価から三価クロメートへの切替が進んでいます。 しかし、三価クロメート液に鉄が溶解すると、耐食性が低下し、液寿命が短くなる欠点がありました。

鉄はなぜ溶解するのか

めっき加工するとき、パイプや板合わせ部品の内部は、
対極の陰になり、電流が流れないため、めっきされません。
三価クロメート液はpH2程度の酸性ですので、 めっきされない素材(鉄)むき出し表面から鉄が溶け出します。 神奈川県メッキ工業組合と神奈川県産業技術センターが 共同開発した「フェロマスク・K」は、鉄の溶解を抑え、 液寿命を延ばす働きがあります。

フェロマスク・K の効果

亜鉛めっき後の化成処理として利用されている三価クロメート液長寿命薬剤「フェロマスク・K」の効果を知るため、神奈川県メッキ工業組合は平成18年6月から8月の間、製造工程でモニタリング試験を行いました。
試験方法として、D社、S社が行ったのは建浴時にフェロマスク・Kを加える以外には補給しない方法です。
T社が行ったのは三価クロメート液補給時の際、補給量に見合った量を追加する方法です。

図1 D社 鉄と添加剤濃度

図1はD社の結果で、建浴時に添加剤を加えたものと加えないものについて静止めっきの自動機で同一形状の品物をいずれも8日間処理しました。添加剤を加えることで1/4程度まで鉄濃度が減少しています。また、水洗水のCOD上昇は5ppm以下でした。

D社 鉄と酸化剤濃度

図2 S社 鉄と添加剤濃度

図2はS社の結果で、建浴時に添加剤を加えた後、静止めっきの自動機で処理し、8週間添加剤を加えなかったものです。
従来に比べて鉄濃度の上昇を防ぐことができました。

S社 鉄と酸化剤濃度

図3 T社 鉄と添加剤濃度

図3はT社の結果で、建浴時に添加剤を加えた後、三価クロメート液補給の際、添加剤を追加することを8週間続けました。
鉄濃度、添加剤の濃度ともにほぼ一定の値が得られ、鉄濃度の上昇を防ぐことができました。

T社 鉄と酸化剤濃度

図4 塩水連続噴霧試験結果

図4は塩水噴霧試験結果です。
亜鉛めっき浴や三価クロメート処理液の種類で異なりますが、フェロマスク・Kを加えたSI社、T社のものでは、それぞれ、白錆、赤錆の発生時間は100時間程度遅くなる結果が得られており、腐食抑制効果が期待できます。

塩水連続噴霧試験結果

取扱方法と注意

特徴

  1. この液は三価クロメート液中で亜鉛めっきの鉄素地など金属が溶解するのを抑える働きがあります。
  2. この液は、溶解している鉄イオンを除去する効果はありません。また、完全に鉄を溶けなくする事はできませんので、従来に比べて極僅かではありますが、鉄イオン濃度は上昇します。
  3. 有機系の薬剤を使用していますが、三価クロメート液に添加する量は少量なので排水処理への負担はほとんどかかりません。(BOD,CODが微増することがあります。)

建浴時の溶解方法

  1. 標準の添加量は新たに建浴した三価クロメート液400リットルに対して、本液1リットルの割合です。
  2. 本液を添加するときは、貴社の設定温度にした三価クロメート液をよくかき混ぜながら、ゆっくりと時間をかけて少しずつ溶かしてください。標準の添加割合の場合、完全に溶け切らなくても、撹拌しながら数時間放置していれば溶解します。

補給方法

補給の場合は建浴時の濃度比率になるよう補給してください。

保管方法

本液は直射日光をさけ、冷暗所に保管してください。
クロメート液の種類によっては添加することでアワが発生し、乾き染みの原因になる場合があります。
この場合は、貴社の状況に応じて、消泡剤添加などの対策をご検討ください。
本製品の使用に際し生じた一切の事柄に関して当組合には一切の責任・義務は生じません。
!! 取り扱いの注意
取り扱い時は保護具(手袋、マスク、保護眼鏡など)を着用し、飲み込んだり、吸入したり、皮膚に触れないようにしてください。目や口に入ったとき、または、皮膚についたときは速やかに水で洗い落とし医師の診断を受けてください。
ご使用前に、必ず製品安全データシートをご参照ください。