優秀賞 フロンティア部門 リ・バース株式会社

大賞 フロンティア部門 ジャパンプローブ株式会社

優秀賞 フロンティア部門 リ・バース株式会社

奨励賞 チーム等々力

奨励賞 株式会社ヤマヨ

特別賞 湯河原担々やきそば会

大賞 エコ部門 株式会社ビッキマン

優秀賞 エコ部門 株式会社横須賀軽金

奨励賞 優成サービス株式会社

 

特別賞 お菓子工房サラ


磁気データ消去装置「ERAZER」

-消せない記録を消す-

“環境”をテーマに起業

リ・バース株式会社 生田代表

 オフィスに置かれた、紺地に『とうきょう』と白文字で書かれた縦型ホーロー板の駅名標が目につく。
 「これ、僕の趣味ですから。どういうわけか、こうした物が紛れ込んでるんですよね」と、リ・バース株式会社代表取締役・生田篤識氏は、若い笑顔を見せた。
 都市鉱山と呼ばれる金属、非鉄金属、特殊金属、貴金属のリサイクル事業を行う中で、引き取ってきた廃品に「面白そうな物を見つけては、こうして記念に取って置く」のだとか。先日は、ゲームセンターから買い取ってきたプリントシール機を解体していて、内蔵された一眼レフカメラが出てきた。
 生田氏が大学卒業後に就職したのは、金融業界だった。「まあまあの成績を上げていた」営業マンとして7ヵ月勤務した後に退職したのは、「自分に自信がついたから(笑)」と本当とも冗談ともつかぬ口調で言う。
 フリーの営業マンとなり、微生物による土壌改良や水質改善を行う会社から業務委託を受けて1年ほど働いた。
 その頃、地元・川崎市と、アジアの都市との間で、環境・起業・国際貢献をキーワードに、人的交流や起業家の育成などを通じてビジネスチャンスの拡大を図るNPO法人アジア起業家村推進機構を知った生田氏は、これに参加。上海の大学との共同事業で、中国に住みながら日系企業が排出する廃棄物について調査を行った。これを日本に運び、適正リサイクルすることを画策するが、コスト面で断念。まずは、日本国内でのリサイクル事業に取り組むことにした。


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回収したパソコン内のデータ

データの消去処理

 パソコン、電子機器類のリサイクルを主体として扱うようになったのは、先行業者によってすでにシステムが出来上がっている中で、それだけが新規参入が可能な領域だったからだ。当時、OA機器を廃棄する場合は、まだ利用者がお金を払って処分するイメージがあった。それを、重量で値を付けて買い取ろうというリ・バースは重宝がられた。
 解体したそれらの機器は、鉄、アルミ、プラスチック、銅線などに仕分けされ、リサイクルされる。そこには、レアメタルと呼ばれる産出量の少ない有用な物資も含まれているのだった。だが、課題もあった。OA機器の引き取りには、パソコン内のハードディスクにあるデータを消去したという証明書の発行が求められていた。当初は、市販のソフトウエアで消去していたが、時間がかかった。上書きソフトで、3回の上書きをするのだが、これに半日以上を要したのだ。
 ハードディスクは、ハンマーで叩いて壊そうとしても、頑丈だし、手間がかかる。ドリルで穴を開けるという方法もあるが、これでは金属の粉を出して、本当の意味のリサイクルとは言えないし、手間は同様だ。なにより、これらの方法では、見た目は破壊されて動作はしなくても、データを完全に消去したわけではない。部分的にでも復旧される可能性があるのだ。
 折も折、リース返却後のOA機器が転売され、そこから貴重な情報が流出するなど、データ漏洩事件が頻発していた。
 生田氏は、データ消去の重要性を強く感じた。と同時に、市販のソフトに頼らない、独自方式による消去装置の開発を模索し始める。

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中小企業だからこそできた開発

ERAZER

 磁気を照射することでデータを消去する装置はすでに既存の製品があった。だが、これは「水平記録方式」と呼ばれるハードディスクにのみ対応できる機械だった。
 リ・バースが目指したのは、より記憶容量の増えた「垂直記録方式」も消去できる、全機種対応可能なものだった。
 開発に2年ほどを要した。自社内で使用することが一番の目的ではあったが、商品化の可能性も視野に入れていた。開発期間には、他社に遅れをとるかもしれない…という焦りがあったのでは?と質問すると、生田氏は余裕の笑みを浮かべた。
 「なにしろニッチ(隙間)業界の、ニッチ企業による、ニッチな開発ですから。ほかの動きはあまり気にならなかったですね」
 それよりも、OA機器のリサイクル事業を行う以上、データ消去は必要不可欠な問題だった。この装置の自社開発は、引くに引けないことだったのである。
 完成した磁気データ消去装置は、そこにハードディスクを入れ、ボタンを押せば数秒で完了するものだった。
 当初は内々で使っていたが、2009年4月に満を持して『ERAZER(イレイザー)』という商品名で発売。プレスリリースを打ち、ホームページなどで案内した。
 「なにしろエンドがコンシューマー(一般消費者)ではないのでね、そんなにポンポン売れないですよ。一度買うと、何度も買い換える種類の物でもないし」と、生田氏は謙遜する。たしかに必要性は高いが、必要とする相手が少ない商品かもしれない。購入するのは、官公庁や学校、大手メーカーだという。
 「しかし、反面」と生田氏が言う。「こういう種類の製品だからこそ、大手メーカーで研究開発するのは難しいと思うんですよ。かかわってくる人間や施設の規模が違うと、利益の抜き方が変わってくるでしょ」
 つまりは、中小企業だからこそできた開発というわけだ。

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次に“消す”もの

 ある日、大手メーカーからノートパソコンがそのまま入る『ERAZER』を作ってくれないかという相談があった。他社に相談したところ、1千万円以上の開発費がかかるとの返答だったという。リ・バースは、その10分の1の価格で引き受けた。そして結局、9台を買ってもらった。
 この、ノートパソコン分解不要の大型マシンは、『TypeL』として販売している。ほかにも厚型ハードディスクがセットできる『TypeM』もあるが、ラインアップ中で一番の人気は、持ち運びに便利な最軽量の『TypeS』だとか。「ますますプライバシー問題が重要視されるようになって、ハードディスクを持ち帰るのではなく、お客様の目の前で、データ消去することが求められるようになってきているからなんです」
 それでも、リ・バースのメインは、あくまでリサイクル事業だと生田氏は言う。
 「たしかに、垂直記録方式に対応する装置を開発したのは、うちが最初かもしれませんが、なにしろ小さい会社ですし、知名度も低いです。うちは資本金が1千万で、大阪支店を併せても7人。しかもリサイクル部門を兼任してるわけですから」
 それでも、消さなければならない新たな対象は次々に現れてくる。このほど、フラッシュメモリなど半導体記憶媒体に強力な電磁波を照射する次世代データ消去装置『ERAZER P』を発売する。
  記憶装置はますます小型化し、多様化してゆく。たとえばケイタイなど、電話機自体を破壊したつもりでも、極小のチップに記録は残ってしまう。
 「コンピュータにパーソナルという言葉が付いてから、消さなければならない記録も多様化していったように思うんですよね」
 消したい記憶は人によって様々だ。そして、リ・バースに消せないデータはない。産業Navi大賞の授賞式でも、大手メーカーの担当者に声をかけられたという。「困っていたんだ」と。

お問い合わせ 電話:045-671-7125 FAX:045-664-7598
一般財団法人神奈川県経営者福祉振興財団 企画事業部

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