優秀賞 環境(エコ)部門 第一電気株式会社

大賞 フロンティア部門 株式会社アイスリー

優秀賞 フロンティア部門 株式会社誠武

Kanatta!奨励賞 横浜消火器株式会社

Kanatta!奨励賞 株式会社トライアングル

特別賞 株式会社ファインスティールエンジニアリング

大賞 エコ部門 株式会社共立

優秀賞 エコ部門 第一電気株式会社

Kanatta!奨励賞 茅ヶ崎4社共同企業体

 

特別賞 心技隊


ハイブリット・アクチュエータ

-新発明が未来を創る-

墜落しない飛行機を

代表 佐藤 寛氏

 1985年8月、日航ジャンボ機が群馬県御巣鷹山中に墜落。この国内最大の航空機事故が、ハイブリッド・アクチュエータ開発の契機となった。
主翼、水平尾翼、垂直尾翼、これらをシリンダーで制御するための油圧配管が、航空機の胴体内には神経のようにうねっている。それが、圧力隔壁の破損により断裂してしまった。結果、垂直尾翼の操縦システム4系統すべてが制御不能となり、ダッチロール(8の字蛇行飛行)を起こしたジャンボは迷走の果てに山岳地帯に吸い込まれていった。
乗員乗客524名のうち520名が死亡したその惨劇をまえに、「墜落しない飛行機ができないものかと思ったんです」と代表取締役佐藤寛氏は当時の思いを語る。
「いや、墜落しない、とまではいかなくとも、せめて墜落事故の原因を減らせればと考えたわけです」 航空機内から油圧配管を取り払った油圧制御システムはできないものか――そう模索して歩みはじめた先は、まさに茨の道だったのである。

 

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壁、壁、壁の連続

ハイブリット・アクチュエータ

 巨大なタンクを備えた本体から誘導モーターによるポンプで吸い上げられた油が、制御弁によって圧力調節され、長い配管を通じて行き着いたシリンダを駆動する、というのが従来の油圧機械である。ジャンボ機の場合だと、巨大なタンクを持つ油圧ユニット4セットを搭載し、主翼、水平尾翼、垂直尾翼をそれぞれ集中制御していることになる。
 ここで考案したのは、油圧配管をなくし、制御弁を使用しない、油タンク、モーター、ポンプを一体化した、まったく新しい油圧システムだった。
 配管をなくすことで、配管自体の破断事故はもちろん、ゲリラ的に発生する油もれのリスクを回避できる。また、本体による集中制御ではなく、個々のシリンダに駆動力があるとすると、垂直尾翼の4系統の操縦システムのうち3つが制御不能になったとしても残る1つで飛ぶことができるわけだ。
 「しかし、これは巨大メーカーが行うような開発でね、うちのような中小企業の手に負えるようなものじゃなかった。巨人に立ち向かうドン・キホーテだったというわけです」 まさにその開発は、はじめから壁、壁、壁の連続だったのである。

 

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サーボモーターの採用

第一電気 製品1

 幾多の苦難を乗り越え、やっとかたちになった新油圧システムの試作品は、重量がありすぎて、ジャンボジェット機ですら離陸できないというものだった。
 同社は1955年に佐藤氏が設立。電子計測・制御機器の設計・製作・販売を主としている。その技術は、各分野で広く評価を得ているものの、佐藤氏自身が語るようにけっして大会社とはいえない。
 ――無理だ。やはり、うちのような規模で成し遂げられるものではなかったんだ。 ついに暗礁に乗り上げたかに見えた開発を転換させたのは、サーボモーターの普及である。
 目標値に合わせて運動を自動制御するサーボモーターは、高精度である分、高価な装置でもあった。それが、中小企業でも扱える価格となって、広く行き渡りはじめていた。
 このサーボモーターの採用により、可動部分の回転速度、トルク、回転方向、停止など自在で高精度の動きが可能になった。それとともに超軽量化をはかることができたのだった。
 さて、いよいよ実用化へ――しかし、物事は順調に向かわなかった。
 あまりにも先進的な技術であるために、中小企業が開発できる製品ではないと、誰もが信用してくれない。聞く耳を持ってくれないのだ。客先からの引き合いも、公の援助もない孤立無援の闘いはつづいた。
 同社が開発した次世代型油圧アクチュエータ(駆動装置)がこの後脚光を浴びるのは、皮肉なことにその革新的な技術ではなく、エコロジーという観点からであった。

 

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省エネというコンセプト

第一電気 製品2

 1997年の京都会議における議定書で、二酸化炭素などの地球温暖化ガス排出量の削減計画が採択されて以来、国としてもなんらかの省エネ技術を世界に向けて示す必要があった。その一環として、通産省(当時)が同社を調査に訪れたのだ。
 常に誘導モーターを動かしつづけなければならない従来の油圧方式にくらべ、新技術ではシリンダーの停止時にはサーボモーターもポンプも停止しているため、消費電力を1/10以下まで低減させることができるのだ。つまりは、仕事量に見合った電力消費で済むわけだ。
 さらに、これまで数年で交換を要し、その廃棄に難渋していた大量の油も、たった数リットルの使用で済む。
 また、仕事をしていないときも、常にポンプでつくりだされた油圧エネルギーは、すべてリリーフ弁を経由し、タンクにもどされていたため、タンク内の油温を上昇させていた。その防止のためにオイルクーラーによる冷却を行っていたわけだが、これも不要になった。
 まさに新技術は、省エネ技術でもあったのだ。

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夢から夢へ

 エコという追い風に乗り、長きにわたる開発期間のなかで技術変更を繰り返し、佐藤氏の夢がハイブリッド・アクチュエータとして実用化された。その後、宇宙開発、鉄道などさまざまな分野に採用されている。
 時代の流れも、発電所という集中制御から各家庭での発電へと送電線をなくす方向に動いているいま、油圧配管を排除して消費電力の削減に成功したハイブリッド・アクチュエータにもますます注目度が高まることだろう。
 実際に航空機にハイブリッド・アクチュエータは搭載されたのか―― 「それはまだこれからです。なにしろ新しい技術ですからね」
西暦2018年を舞台に機械と人類との戦いを描いたSF映画『ターミネーター4』では、主人公のジョン・コナーが乗ったヘリコプターが攻撃され、「油圧がやられた!」というパイロットの叫び声とともに墜落する場面がある。人類の救世主がコナーなら、今後のハイブリッド・アクチュエータの普及が、彼を救うことになるかもしれない。
 さて、佐藤氏の夢もまた、新たな方向に向かっている。
 「地震に安全な、海上都市の土台をつくることですよ」
 これもまたSF映画張りにスケールの大きな開発になりそうだが、佐藤氏の手にかかれば、見果てぬ夢ではないはずだ。

 

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