大賞 フロンティア部門 株式会社アイスリー

大賞 フロンティア部門 株式会社アイスリー

優秀賞 フロンティア部門 株式会社誠武

Kanatta!奨励賞 横浜消火器株式会社

Kanatta!奨励賞 株式会社トライアングル

特別賞 株式会社ファインスティールエンジニアリング

大賞 エコ部門 株式会社共立

優秀賞 エコ部門 第一電気株式会社

Kanatta!奨励賞 茅ヶ崎4社共同企業体

 

特別賞 心技隊


無電力引き戸開閉アシスト装置 「AIDoor(エイドア)」

  • 代表取締役: 石井 正一
  • 所在地: 〒252-0314  神奈川県相模原市南区南台5-1-1
  • 設立:2006年5月 従業員数:2人 
  • 資本金:1,200万円
  • TEL: 042-856-1950 / FAX: 042-856-1960
  • 産業Navi個店ページ:https://www.navida.ne.jp/snavi/5154_1.html
  • 公式ページ:http://www.i-3.co.jp/

-職人の理想がかたちに-

腕利き職人

株式会社アイスリー石井代表

 20歳で入社したのは、自動ドアの設置会社だった。それは、やはり自動ドアに興味があったから?
 「自動ドアが好き、っていう人間もあんまりいないよね」と、代表取締役石井正一氏は人懐こい笑みを浮かべた。
 父親の知り合いの紹介でたまたま入社した会社だった。自動ドアの設置技術は、施工の早さ、正確さで決まる。ドアを設置するのは、常に水平な場所とは限らない。なんらかのねじれがある。それを瞬時に見極め、工夫するのが職人の腕だ。その腕前が、3年たち4年たちすると職場の誰よりも秀でていた。
 その後25歳で独立。有限会社石井商事を立ち上げた。以来20年、順当な経営を行ってきたわけだが、「下請け会社の善し悪しってものがありますよね。仕事は待ってれば自然に入ってくるけど、上からの押し付けもある。常にその葛藤のなかにいたかな」


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安全な自動ドアはない

エイドア

 そしてもうひとつの葛藤は、自分の扱っている自動ドアというものの安全性に対してであった。自動ドアの赤外線センサーは、安全面を重視して感知範囲を広げれば、無用の場合に開閉を繰り返すことになる。かといって、エリアを狭めれば、子どもの身の丈では感知しないようなことがある。腰の曲がったおばあちゃんが、動態感知するセンサーを外れ、顔だけが先に扉部分に到着したために、閉まってきたドアに眼鏡を弾き飛ばされてしまったという事例もあった。
 その不安が頂点に達した。2004年、6歳の男児が回転ドアに挟まれ死亡するあの事故が起こったのだ。
 ――おれがほんとうに安全な自動ドアをつくろう!
 石井氏と石井商事の社員4人は、それぞれの持ち場の仕事を終えると、夕刻、同社に集合し、新ドア開発の研究に没頭した。
 当初からみなの総意にあったのは、ドアの動力として電気を用いないということだった。普通科高校出身であり電気技術を学んだわけではなかったし、社員のなかにもその道の専門家はいなかった。
 石井氏が求めたのは、いかに軽くドアを横滑りさせるかで、ひいては、そこにどんな仕掛けを用いるかということだった。
 最初に眼を付けたのは、パンツのゴムひもで引っ張る方法。だが、この仕掛けは見事に失敗。開くけれど閉まらない、閉まるけれど開かないといったドアができた。
 その後、錘をぶら下げたり、シーソー方式も考えた。さまざまなものを試したがどれもうまくいかない。

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試行錯誤

エイドアレール

 磁石を試みた時には、イイかもと思えた。20センチ幅のドアの下に小さな磁石をS極・N極交互に取り付け、1メートルのレーン側にもこれを同様に並べる模型をつくった。磁気の反発力で推進するリニアモーターカーの原理を応用したのだ。ドアを横滑りさせてみると、20センチほど進んだところで、びよよよ〜んといった感じで止まってしまう。もういちどやってみた。結果はおなじである。
 「磁石の同極が反発し合ってるのって一過性のもので、ある所までくると、SとNがくっ付いちゃうらしいんですね。つまり、少しだけ動いてたのは"なんちゃってリニア"だったというわけなんです」
 この時には落胆した。行き詰った眼に映ったのは、ひとつの玩具だった。
 それは、後ろに引っ張って手を離すと走る、プルバック式のぜんまい自動車である。
 ――いけるかもしれない!
 だが、閉まっているドアを開けるのに、さらに引くようなワンアクションを加えることは不可能だ。いや、待てよ、ギアの回転方向によっては、普通にドアを開けるだけでぜんまいが機能するのではないか?
 専門技術者でない石井氏は、絵コンテのような図面を何枚も何枚も書いた。そして、設計上ではついにこれが可能になったのである。

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晴れの日

 さて、実際にこの仕掛けをつくって、はたしてドアが動くかどうかである。
 そこから、仕掛けをつくってくれそうな工場をさがし、絵コンテを見せた。すると、「やめておけ」と、断られてしまう。ぜんまい仕掛けで重い扉が動くはずがないというのだ。レールと滑車を動かす技術なら、職人の自分には自信があるから、と相手を説得した。その熱意に向こうも折れ、「じゃ、1回だけだぞ」と引き受けてくれた。試作品をつくるのに20〜30万かかるともいわれた。開発企業アイスリーを設立したものの出費がかさむばかりで痛かったが、これも致し方ない。
 1か月後、試作品ができあがってきた。 テストの結果は……
 「やった!」
 するすると動いた。これをブラッシュアップすれば、なんとかなるはずだ。
 「ほんとうに動いたのか?」
 試作をつくった工場の担当者も見にやってきた。そうなると、ぜんまいの強度を変えたり、ギアの比率を調節したりと、その後も協力してくれた。
 いよいよ耐久テストという段階まできた。だが、扉の開け閉てを3000回繰り返すと決まってぜんまいが切れてしまう。
 耐久性の最低ラインは20万回を超えることだ。そのためには、もっと強いぜんまいが必要だった。
 いくつかのぜんまいメーカーをあたった。そのうち1社の工場長が、石井氏が見せたぜんまいをいきなりぽんと放り捨てた。「こんなもの、ぜんまいじゃねえ」 国産ぜんまいこそ本物だという工場長に協力を求めたところ、「何万個必要なんだ?」ときかれた。5つばかりでいいと言う石井氏に、ロットの大きな取り引きしかしない相手も、職人同士、なにかの意気に感じてくれたのか求めに応じてくれたのだった。
       ◆◇◆
 半年以上かかって耐久テストは20万回を超えた。
 AID(補助)とDoor(扉)から名づけられたAIDoor(エイドア)の評判を聞きつけた鉄道関係者が視察にやってきた。地下鉄の連結部分のドアに使いたいという。しかし、採用されるためには35万回の耐久テストをクリアしなければならない。
 「このテストがひどく荒っぽいんですよ」
 がしゃーん、がしゃーんと大きな音をたて、コンプレッサーによるドアの自動開閉テストは繰り返される。それに耐えている姿がいじらしくて、石井氏は涙が出た。
       ◆◇◆
 日曜日だった。晴れて自分がつくったドアが搭載された地下鉄に、妻と娘を連れて乗り込んだ。
 「当初、自分のドアが取り付けられている車両は2両だけだったんでね。何時にどのあたりを走るか確認しておいたんですよ。実際にドアが付いているのを見た時は嬉しくてね」
 車内で記念写真を撮った。
 「三人で先頭から最後尾まで見てまわりましたよ」
 誇らしかった。
 さて、AIDoorの安全性である。「大丈夫だから」と促され、おっかなびっくりレール上に手を差し入れてみた。そこに向けて力いっぱい引かれた扉は、手の数センチ前でぴたりと止まった。その後でゆっくりと閉まるドアを見ていると、
 「ね!」
 石井氏が満足げな笑顔を向けた。

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