産業Naviトップ > かながわモデル工場レポート

かながわモデル工場レポート

株式会社イノウエ

株式会社イノウエ

現在の相模原市の緑区、旧津久井町に本社・工場を構える同社。津久井は「くみひも」の製造で昔から著名な地である。 同社は、1928年に先代の社長がこの地で創業。創業当時は、「くみひも」を生産していたが、時代の変化とともに日本で初めて「ヘアゴム」の生産を行うこととなる。 現在の社長は2代目。元々はサラリーマンだったが、1967年に同社へ入社。先代の社長より厳しくも暖かい訓練を受けた。

工場内へ一歩足を踏み入れると、「こんにちは」と従業員の方からの元気で明るい声。 仕事をする上での活力や、バイタリティがこちらに溢れんばかりに伝わってくる。

ヘアゴムの誕生〜高度経済成長と日本文化の消失〜

ヘアゴム

契機は、1960年代にミニスカートを世界に流行させた、ファッションモデル“ツイギー”の来日だった。当時は白と黒しかヘアゴムがなかった時代に、「ミニスカートと黒髪に似合う色系のヘアゴムを世に出せば必ず売れる」との思いから、1972年に15色のヘアゴムを発売した。
ところが、発売後4年間は全く売れなかった。それまでにない商品であったため、流通業者もどう取り扱えばよいか分からなかったそうである。言い換えれば時代の先を行き過ぎてしまっていたのだ。

在庫過多になり、経営も非常に厳しくなった。

そんな中、幸運にも百貨店と取引がある業者と知り合い、ヘアゴムを百貨店におくことができた。このことで注目されるようになり、発売して4年目にしてやっと売れはじめ、しばらくすると一気に受注が増加し、生産が追いつかないほどの爆発的ヒットとなった。急遽、新たな工場を建て、生産設備を増強し、対応を行なった。

1970年代半ばころの日本はちょうど、時代の転換期だった。人々の日常生活においても、寝巻がパジャマに変わり、風呂敷が手提げ袋に変わった。このように「結わく」という日本文化が消え始めつつあった。「結わく」ことができない人が増えてきたこともあり、井上社長は「結わく」必要がないヘアゴム、つまり輪状のヘアゴムの開発の必要性を認識した。

1983年からはヘアゴムを輪にする技術の研究を始めた。自分で髪を結わくには輪ゴムが便利だが、裸のままでは髪にからまってしまい、見栄えも悪い。これらを改善することは必要不可欠であった。

“壁の連続”を乗り越えて

工場

しかし、ヘアゴムを輪にすることは容易ではなかった。天然ゴムとナイロン糸とを接着する研究は、困難を極めた。解決をしなければならない課題も山積だった。国内の接着剤メーカ6社に接着剤の製造を依頼しても、どの程度使用するかが不明なため、応じてもらえない。

そんな中、仕入れ先からアメリカで話を聞きたいと言っているメーカーがあるとの連絡を受け、早速相談に乗ってもらうことになった。
商談もうまく成立し、3年の時を経て、リングに接着可能な接着剤の開発に漕ぎつけることができた。

この間、装着試験も並行して行なった。当時、幼稚園生の嫌がる娘を説得し、何度も何度も試験を行った。ようやく発売にたどり着くと、いきなり爆発的な売行きとなった。
しかし、社長自身当時の接着剤には満足していなかったため、より接着面がきれいで、強度の高い接着剤を求め、再び研究を重ねた。そしてようやく1995年に特許申請をし、取得することができた。

人材育成、経営理念

株式会社イノウエ 工場

「消費者の立場に立ち、モノづくりを行う」ということ。これは、会社がいつまでも愛されるために、絶対に必要なことだと語る社長。 「従業員の皆さんは、こんな山の中の当社を選んでくれた。当社は、従業員の皆さんの会社だと思う。さらには、従業員を支える家族の会社であると思う。そして、従業員の満足が会社の満足につながり、もっと言うと、お客様の満足につながる。」
社長にとっては、会社は自分の持ち物ではなく、従業員を含めた家族のものなのである。

人材の育成については、「目標に対し、私はどういう行動をすればよいだろうか」と考え、行動できる能力を身につけることが必要だというのが社長の考えだ。自発的に仕事に取り組むからこそ、持っている能力が引き出される。そしてこの能力を引き出すのが上司の役割である。さらに、何より社長が大事にするのは、人間の「心」である。 「重要なことは、その人が持っているものをごく自然に出せる環境づくりをする。それは、温かい言葉をかけることと、不得意な部分を乗り越えた時は褒めること。そうすることにより、自信がつき、レベルが上がる。そして、社長が従業員に惹かれ、従業員が社長に惹かれることにより、意思疎通のキャッチボールがスムーズになり、生産が上がり、会社が育っていく。良いところをきちっと認め合っていく。こういった純粋さを大切にしていけば相手も応えてくれる。当社が伸びているのは、このことが大きいと感じている。」と熱いまなざしで語る。

現在そして

株式会社イノウエ 商製品

現在は、国内のみならず中国、北米ニューヨークの展示会へ出店し、ヘアゴムの輸出も始まっている。そして新商品の開発も同時進行で行っている。

常に新商品のアイデアづくりは欠かさないという社長。

今後も「ヘアゴム」の先駆者として、さまざまな新たな展開があることを確信した。

このページの先頭へ

社  名 株式会社イノウエ
所在地 〒252-0155 相模原市緑区鳥屋750番地
電話・FAX Tel042-785-0136 / Fax042-785-1279
事業内容 ゴムひも・手芸用組みひも製造販売、産業資材、衣料、装粧品、装飾、包装