特別賞 有限会社相和シボリ工業

取締役: 大浪 忠
所在地: 〒213-0014 川崎市高津区新作3-3-2
設立: 1982年12月 従業員: 4名
資本金: 300万円
TEL: 044-888-6361 / FAX: 044-888-6306
産業Naviページ:-
公式ページ: http://aiwasibori.com/

へら絞りによる金胎麗漆(きんたいれいうるし)

2012年度のかわさきものづくりPR製品としてステンレスビアタンブラーを制作し、その後さらに付加価値を持たせた制作開発にとりかかり、「金胎麗漆」を完成す事ができました。
本製品の一番の特徴は3者によるコラボレーションという事です。
へら絞りは弊社代表 大浪 忠、研磨は小林研業の小林社長、漆は村上の垣沼氏によるものです。これら一流の職人によるものづくりの顔が見える事で、消費者にとって安心や価値の向上にもつながります。
金胎麗漆
 

すべてはヘラ絞りという技術を知ってもらうため

家族経営

 
ヘラ絞りとは、金属の板を回転させながら、ヘラと呼ばれる棒を押し当てて圧力を加え、少しずつ変形させていく加工法である。くるくる回して加工するから、できる製品も基本的に丸いものになる。
有限会社相和シボリ工業は1982年設立。同社代表取締役・大浪忠氏は、薬品容器のタンクや横浜スタジアム照明塔のライトカバーなどの製作をおこなってきた。忠氏は腕のいい職人だが、収益を上げるためには量産が必要である。妻で同社取締役の美津江氏は、非力な自分がヘラ絞りを手伝うため、自動絞り機の導入に踏み切る。
「非常に高価な機械でしたし、銀行さんもおカネを貸してくれませんでした。でも、リースならなんとかなるというので決めました」そこで美津江氏はにんまり微笑む。「どうせなら、と2台導入することにしたんですよ。わたし、思い切りがいいんです」
すると間もなく自動絞り機のディーラーが、大口の仕事を紹介してくれた。
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かわさきマイスター

 
両親の働く背中を見て育った長男の友和氏が同社に入社するのもまた自然な成り行きだった。工場長に就任して数年、友和氏は同社の働き方について疑問を持つようになっていた。毎日夜遅くまで仕事をしている。土曜も日曜もない。「日々仕事に追われていて忙しくしているのですが、かといって収益が上がっているわけではない― なんとかならないものだろうかと思いました」
そうした中、テクニカルショウヨコハマが開催されることを知る。こうした展示会も見学すればなにかヒントが得られるかもしれないと友和氏は思い立ち、「行ってみたい」と忠氏に進言する。「半日も機械の前を離れるのか……」と忠氏は渋ったが、なんとか許可を得た。
会場で友和氏は、川崎市役所の職員何人かと名刺交換した。彼らは市内の中小企業に経営アドバイスするキャラバン隊であり、数日して同社を訪れた。その際、忠氏の腕前を見込んで、市が認定する、かわさきマイスターの認定試験を受けては?と提案してきた。だが、職人肌で人前に出るのが苦手な忠氏は固辞する。
そんな忠氏の心を変化させたのが、東日本大震災だった。故郷石巻の自らも通った大川小のたくさんの子どもたちが津波の犠牲になった。彼の兄弟と身内も失った。なにかをしなければという思いが、忠氏を駆り立てた。2回に及ぶ実技と面接試験。特に二次試験での筒形状を深く絞り、直径460ミリの薄い金属の開口部分を補強するために行うカール(巻き込む)技術は審査員を驚嘆させた。
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今、仕事が楽しい

 
マイスターの認定を受けた忠氏の技術を用いて、なにか商品を生み出せないだろうか?そう友和氏は考えるようになった。そこで思い至ったのがビアタンブラーである。ステンレスを深絞りし、しかも口のあたる部分をすぼまるように加工する。これは高度なヘラ絞りの技術を必要とする。
さらに、忠氏のヘラ絞りの特徴はナマしを行わないところにある。焼鈍、焼き鈍し ―呼び名はいろいろあるが、現場ではもっぱらナマすと言っているそうだ。通常、硬いステンレスを絞る場合、材料を炉に入れて熱を加え、軟らかくしてから絞る。しかし、金属それぞれが持つ特性を熟知する忠氏は、ステンレスのクセを読み取ってナマさずに絞っていく。熱処理しないことで、ステンレスタンブラーは変色することがないのだ。
今回産業Navi大賞特別賞を受賞したのは、忠氏が絞ったロックグラスに、新潟県村上で漆の神様と呼ばれる工芸家・垣沼旗一氏が漆を塗った金胎麗漆である。海の上を飛ぶカモメをイメージしたデザインが、港ヨコハマを想起させると審査員の間でも評価が高かった。
金胎麗漆もそうだが、ビアグラスも鏡面研磨を新潟市の小林研業が担当している。ビアグラスの内側はビールの泡立ちがよくなる螺旋研磨という加工が施されている。ステンレス製品には名入れの要望も受け付けていて、美津江氏が、「今回も思いきって」レーザー機械の導入に踏み切ったのだが評判は上々だ。会社や団体の設立記念を刻するなど、まとまった数の注文が入る。
「異業種とのコラボレーションで商品を製作するのもヘラ絞りという技術を知ってほしいからです」と友和氏は言う。その一環として、地元の小学生や中学生にモノづくり体験教室を行っている。そうしたふれあいの中で、「改めて自分の仕事が楽しく感じられるようになった」と忠氏は頬を緩める。
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