優秀賞 その他ビジネス部門 アップコン株式会社

代表取締役: 松藤 展和
所在地: 〒213-0012 川崎市高津区坂戸3-2-1 KSP東棟611
設立: 2003年6月 従業員: 39名
資本金: 4,300万円
TEL: 044-820-8120 / FAX: 044-820-8121
産業Naviページ:-
公式ページ: http://www.upcon.co.jp/

ウレタン樹脂を使用した小規模断面トンネル維持・補修工法

国民的資産である農業水利施設用小規模断面トンネルの長寿命化、及びライフサイクルコストを低減するストックマネジメントに貢献する。
小規模断面トンネルの維持・補修に特化して開発した新工法は、日本で初めて独立電源を施工駆動用電源として採用。トンネルへの仮設電源の引き込みを不要にしたことで、これまで対応が出来なかった長延長のトンネル深部に対応するだけでなく、工期の短縮/コストを抑えた工法として採用されています。
FRT工法
 

要望の中で生まれた日本の用水路などインフラ長寿命化を支える新工法

日米で学び、豪で設計の仕事に

 
日本の大学の建築学科を卒業した松藤展和氏は、アメリカ留学し大学院のマスターコースで学んだ。当時は日本には学びたかったインテリアデザイン学科が大学になかったからだ。
「実は大学時代はあまり勉強熱心ではなかったんですよ。でも、親が苦労してアメリカに送ってくれたんでね、留学してからは猛勉強しました。7日のうち2日は完全な徹夜でしたから」
おかげで成績優秀者として卒業式に出席。最後に角帽を投げ上げた時、隣にいたのは乗馬競技のプレーヤーをロゴマークとする世界的に有名なファッションデザイナーだった。彼は、ファインアーツの講師として招かれていたが、その式をもって講師卒業することになっていたのだ。
1988年の卒業後は、オーストラリアの設計事務所に勤務。シドニーの中心地にあるビルの設計にかかわった。
最上階レストランの内装コンペでは、料理メニューやワインリストにまで提案は及び、見事に案件を勝ち取った。オープンにあたってはシェフのスカウトまで行っている。
「おいしいお店を選ぶ自信があるんです。オーストラリアの設計事務所では、ボスから食べ歩きの資金を支給されてました。その代わりに、料理の味や内装などリポートを提出しなければならなかったんですが。まあ、すべてが勉強ということで」
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人が喜ぶ仕事を

 
バブル経済の時期には、景気のいい日本に進出しようとする企業の設計も含め、20〜25物件を同時に進行していた。
「その設計事務所にいた9年間で、普通の設計者が一生分行う仕事をしました」
もちろん、多くの引き抜きの誘いもあった。その中で、地盤沈下をウレタンの発泡圧力で修復するというビジネスがあり、その会社のスカウトが執拗にラブコールを送って寄越す。最初はまったく関心がなかったが、熱心な誘いに負けて施工現場を見に行くことにした。
100平方メートルの研究室は、部屋の真ん中がすり鉢状にへこんでいる。そこに立つように言われ、スタッフが機械で発泡ウレタン樹脂を注入すると、松藤氏を乗せたまま陥没していたコンクリート床が浮かび上がったのだ。彼は静かな衝撃を覚えた。これなら人に喜ばれる仕事ができるのではないかと思ったのである。
「設計という仕事は100点で当たり前です。クライアントから100点を得るためには、たとえば“この床に亡きおじいさまが愛された思いが継承できるようデザインしました” といったサプライズを用意し、110点をねらう必要がある。一方で、ちょっとした瑕疵や行き違いがあれば、簡単に50点マイナスにつながります」
一方でこの工法はどうだ―
「床を壊し、コンクリートを打ちかえる時間とおカネをはぶくことができます。いわば大手術が必要だと思っていた病気が、2〜3回の通院で治るというのに等しい」
松藤氏は、このオーストラリアの会社の日本法人を2001年にスタートし、翌年には単年度黒字を計上するに至る。だが、彼の中に危惧するものがあった。
当時、日本ではアスベスト問題が叫ばれていた。この工法による環境面の配慮は万全か?しかし、原料については企業秘密で会社側は説明しない。分からない以上、自分は祖国である日本で、このビジネスを続ける気はなかった。
職から離れた松藤氏は、日本の実家で自由な気分を味わっていた。相変わらず企業からの誘いはあったが、「しばらくブラブラしていたかったんです」と当時を振り返って笑う。
その時に思い至った。環境に安全ならば、社会貢献できるのではないか、と。松藤氏はすぐさま研究開発に没頭した。
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環境に配慮したアップコン工法

 
2003年6月アップコン社を設立。
ポリオールとイソシアネートの2液を混ぜ合わせると、短時間で液体は化学反応によりクリーム状に変わり、やがてゲル状からウレタン樹脂固体を形成する。地盤に注入されたウレタンは、この反応を行いながら、半径1〜1.5メートルの影響範囲で広がっていく。ウレタン樹脂は土壌汚染に影響を及ぼす物質を含んでいないのはもちろん、完全ノンフロン樹脂を使用。環境保全への効果が極めて高い。これがアップコン工法である。
設立間もなく、物流センターの大規模倉庫の床沈下修正の依頼が入った。スタートは順調かに思えた。ところがアメリカ製のウレタン注入装置の部品に不具合が見つかった。松藤氏はメーカーから代替部品を取り寄せるべく連絡した。2〜3週間で届くだろうとの返答である。
「それは、私の海外での経験上、到着までに3ヵ月かかるという意味です」
そのとおりで、実際に代替部品の到着までに3ヵ月を要した。ではどうしたかというと、松藤氏は似たような部品を探してきて、ガムテープで留め、当座をしのいだのだ。倉庫の床が沈下すれば、ラックが傾いてフォークリフトが真っ直ぐに入らない。さらには、ラックが倒れ大事故にもつながる。その後も店舗、工場などを中心に依頼は引きも切らなかった。
東日本大震災の液状化により、新築住宅が大きく沈下した案件があった。沈下修正を行うと、施主には泣いて感謝された。これこそが人の役に立てる仕事なのだと感じた。
クライアントからの要望とともにウレタン樹脂を使った、新技術・新工法が増えていく。その中で生まれたのが、今回産業Navi大賞優秀賞を受賞した小規模断面トンネル維持・補修工法である。
トンネルは外部からの土圧をアーチアクションで受け止める事により耐圧強度を発揮する。覆工背面空洞(トンネルの天井裏側)の発生による偏った土圧がかかり続けると覆工が破壊され、トンネルは土圧を支えきれず崩落してしまう。そこで空洞に発泡ウレタン樹脂を充填する事により、トンネル覆工に働く土圧を均等化させ、トンネルの耐圧強度を回復し、トンネル構造の健全化、延命化を計るのが小規模断面トンネルの維持・補修工法である。
注入設備の小型・軽量化と電源のバッテリー化により、車両の進入出来ない距離の長い小規模断面トンネルの空洞充填を、大掛かりな仮設工事を必要とせず施工可能にした事で、農業用水路やダム、水道施設に付随する導水路トンネルに対して短工期、低コストで補修工事を実現した。永続的に使用することを可能にする、仮設引き込み電線の距離に影響を受けない、独立電源を使用した機材を採用したことも大きい。これにより、フレキシブルな対応を可能にした。
今回の受賞について松藤氏は、「自信になるし、対外的にもアピールしていきたい」と語る。
その一方で、「私たちの行っていることは、製薬会社のビジネスモデルに近いんです」とも。「この新技術はいわば新薬。我々のような小規模の会社だけで、社会インフラを支えることはできません。小規模断面トンネル維持・補修工法がこの業界の中で独占体制となるのではなく大衆薬となり、我々は新しい新薬の研究に着手し、新しいマーケットをつくっていく―これが理想です」
松藤氏の視線は常に先に向けられている。
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