大賞 メビオール株式会社

代表取締役社長: 森 有一
所在地: 〒254-0075 平塚市中原1-25-8
設立: 1995年9月 従業員: 7名
資本金: 9,400万円
TEL: 0463-37-4301 / FAX: 0463-37-4302
産業Naviページ:-
公式ページ: http://mebiol.co.jp

安全・高栄養価の農産物を生産する農業システム(アイメック®)

医療用に開発してきた膜およびハイドロゲル技術を農業に展開し、安全、高栄養価の農産物を生産する持続的農業技術(アイメック®)を世界に先駆けて開発しました。
アイメックは土と水の代わりにフィルム上のハイドロゲルを活用する新規な農業技術で、土耕栽培(重労働、低収益)や水耕栽培(高コスト、低品質)の問題を解決できるため、国内では急速に普及し始めました。
海外では、アイメックが温暖化による水不足、土壌劣化などに伴う食糧不足の解決策として期待され、中東や中国で既に採用されています。
低環境負荷・高品質の新しい農業技術 アイメック®(フィルム農法)
 

最先端技術を歴史ある農業ビジネスに応用

実験農園にて

代表取締役社長 森有一氏
「まあ、見ていただくのが早いでしょう」
メビオール株式会社代表取締役社長・森有一氏が社屋内のドアを開く。室内にはラックが置かれ、そこにはたくさんの水槽が並んでいる。水槽で、ミズナなどの野菜が栽培されているのだ。ビルの中の研究農園は、もはや珍しくはない光景だった。
だが、圧倒的に違っているところがあった。通常の水耕栽培なら、野菜の根は栄養水に浸っている。しかし、この農園では、水面にフタのように浮かべられたフィルム状の透明シートに野菜は根を広げているのだった。
野菜だけではない、丈の低いヒマワリもガラス鉢で同じように育てられている。これこそ、森氏が世界に先駆けて開発した持続的農業技術―アイメックだった。
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フィルムにあいたナノサイズの孔

 
アイメックは、土と水の代わりにフィルム状のハイドロゲルを活用する。アイメックに使用するメビオール製のフィルム状ハイドロゲルがアイメックフィルムだ。
アイメックフィルムは、ナノサイズの孔が開いた3次元高分子網目構造から成る。水分子や肥料成分のような数ナノメーター以下の低分子量物質は吸収するが、数十ナノメーター以上の大きさのウイルスや菌は排除する。
日本の大手化学企業を経て、アメリカの企業研究所に勤務した森氏が、1995年に設立したのが同社である。
「日米でいろいろやってきたのだから、残るはベンチャーしかないよね」と森氏は笑う。
森氏が専門に行ってきたのは、ハイドロゲルをゴム状、膜状、繊維状にし、心臓、腎臓、血管などの人工臓器をつくることだった。人工透析にはフィルム状のハイドロゲルを使用するが、このフィルムにもナノサイズの孔があり、尿素、アンモニアなどの毒素を除去して血液を浄化する。
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化石燃料が農業を救う

森氏が起業を思い立った時、その事業目的はすでに決まっていた。医療用に開発してきた膜およびハイドロゲル技術を、農業に展開することだったのである。
当時、地球温暖化による環境問題が叫ばれはじめ、人口急増による食糧問題への危機を加速させた。
「人類は化石燃料というパンドラの箱を開けてしまった。以来、産業革命の鉄の時代を経て、プラスチックへ。木綿はナイロンへと変わった。動植物が地中に堆積し、数億年をかけてできたエネルギーを、一瞬にして燃やしてしまったのです」
産業革命以降、化石燃料を大量に使用することで進んだ地球温暖化は、真水資源を枯渇させ、農業への影響が懸念されている。そして、それを救うのもまた化石燃料から生まれたハイドロゲルであると森氏は考えたのだった。
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ストレスがトマトを甘くする

 
アイメックフィルムの下の養液が、ウイルスや菌で汚染されても、フィルムの上に根を広げた植物が感染することはない。また、ハイドロゲルからできているアイメックフィルムの中の水は、養分を含む結合水であり、水耕栽培で用いられる自由水と違って植物は吸水しにくい。この水分ストレスに対抗して、水分を吸収するため、植物は糖やアミノ酸を大量に合成し浸透圧を高める。たとえばトマトなら高糖度化、高栄養化する。
アイメック栽培で育ったトマトを収穫し、まるごと絞ってつくり上げたジュースの、なんと甘く豊潤だったことか。
「アイメックフィルムで覆われ、必要最低限の養分や水分で育てられるという環境を、植物はよしとしません。だから、ほかの場所に移ろうとする。そのために、甘い実をつけ、鳥などに食べさせて、もっと良い場所に種を運んでもらうのです。植物本来の適応性(アダプタビリティ)を引き出すのが、アイメックなのです」
水耕栽培ではここまで甘いトマトはできない。葉物についても、アイメックで収穫した野菜は、水耕栽培の3倍のビタミンを含む。また、根が養液中にあるので、養液が腐らないように殺菌する、あるいは交換する。また、根に必要な酸素を液中にバブリングするなど、厄介な工程が必要になるなど、技術が必要なのも水耕栽培である。その点、誰でも簡便に行えるアイメックは普及し易い。
同社では、アイメックを農業未経験者でも容易に実施できるよう、栽培ベッド、給液システム、フィルムをシステム化している。アイメックの技術は、その新規性、独創性が認められ、すでに116ヵ国以上(日、米、欧、豪、加、中、韓、露、アフリカ諸国など)で特許が成立している。アイメック事業は上記特許に基づくロイヤリティー事業であり、水不足、土壌劣化にともなう食糧不足の解決策として海外でも期待が高い。
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ムダが面白い

日米の企業で、長足な進歩を遂げた今日の高分子化学が天然素材をプラスチックに変えることにより、人類に大きな利便性を提供した。さらに、この行き過ぎた利便性が地球規模の環境破壊を引き起こしていることを森氏は目の当たりにしてきた。
環境破壊による食糧危機の解決には植物の力を借りる以外にないと考えた。
「農業がなければ今日の1/2,000の人類しか地球上に生きられなかったと言われています。しかし、その農業には大量の土、大量の水というコストが必要です。土と水の代わりをするプラスチック(アイメックフィルム)により植物は新たな機能を獲得しました」
しかし、アイメックの認知には長い時間がかかった。太古の昔から土を使ってきた農業にとって土は最も重要な存在であり、他に代替えが効かないものという信仰があった。
当初、同社は沖縄などに独自農場を展開し、アピールを行った。そして、新しい農業技術に興味を持ったのは、農家ではなく、レストラン業、建設業、製造業といった人々だった。
「農家は農作物をつくるのが専門です。売るのは農協が手掛けているわけです。ところが、アイメックに最初に興味を持った業界の人々は、農作物は食べて腹を満たすものとしてではなく、人を健康にするものとして捉えた。付加価値を与えることに興味を抱いていた」
アイメックが定着するまで社の設立から18年を要したことになる。「植物は時間がかかるんですよ」と森氏が微笑む。父は彫刻家だった。幼い頃、裸婦像のモデルがいるアトリエに森氏を入れてくれた父の口癖は、「感性、創造力を大事にせよ」と「ムダが面白い」だった。その父が鉄の棒や荒縄を骨格に粘土でつくる像が、モデルの女性よりも質感を持っていくことが不思議だった。彫刻家は収入が不安定で、高校生になると母の着物を持って質屋通いした。そこでウイン-ウインの交渉術を学んだ。もうひとつ、中学時代の物理の先生の「森羅万象には必ず訳がある。それをとことん追求せよ」という言葉が森氏の中に深く息づいている。
「ハイドロゲルでメディカルをずっとやってきました。その最先端技術が、農業という歴史あるビジネスに応用できた。それが産業Navi大賞というかたちで評価されたのが非常に光栄。農業に新しい流れができたのなら、会社を設立した意義があった」と森氏が受賞の弁を述べた。そして、そこに、「まだ結果が出たわけではないが」と付け足すことも忘れなかった。
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