大賞 株式会社バイオクロマト

代表取締役: 木下 一真
所在地: 〒251-0053 藤沢市本町1-12-19
設立: 1983年1月 従業員: 14名
資本金: 2,000万円
TEL: 0466-23-8382 / FAX: 0466-23-8279
産業Naviページ: http://www.navida.ne.jp/snavi/100190_1.html
公式ページ: http://www.bicr.co.jp

理化学研究に微量少量専用の濃縮装置を普及〜「コンビニ・エバポ シリーズ」〜

大学、製薬会社、食品・環境分野などの研究施設では実験前の前処理として、必ず試料の濃縮工程があり、その工程は手間と時間がかかるため研究員は頭を悩ませていた。弊社はそのような研究員にむけ、前処理ではなく多くの研究時間を確保する事を目的とした研究支援事業である。
「コンビニ・エバポ シリーズ」は試料用の容器に最適な微量、少量専用濃縮装置で、濃縮原理を新しく開発、保存容器や実験時の容器に濃縮原理を施した栓をすることで、従来の濃縮原理でおこるリスクを排除した新しい研究機器の提案である。
コンビニ・エバポ
 

実績が評価されての大賞受賞

社名はクロマトグラフィーから

代表取締役 木下一真氏
今回かながわ産業Navi大賞の大賞を受賞した株式会社バイオクロマトのコンビニ・エバポシリーズは、溶液の濃縮原理を新しく開発した研究機器である。
……と記述してみたものの、専門知識をお持ちの方でなければ、この事業について理解できないのではないかと想像する。そこで、同社の成り立ちを追うことで、順番に説明していきたい。
大手研究機関、大学、行政研究所の分 析セクションに、実験支援にかかわる機器、消耗品の販売を行う会社として、現代表取締役・木下一真氏の父が1983年に設立したのが同社である。特に、クロマトグラフィーに用いる機器と消耗品に特化していたことと、これからはバイオテクノロジーの時代がくると予期したことから、バイオテクノロジー+クロマトグラフィーが社名の由来となった。
クロマトグラフィーとは、混ざり合っている物質を分離する方法である。「たとえば」と木下氏が目の前のコップを指して「このお茶の中にカフェインが含まれているかどうか、クロマトグラフィーによって分かるわけです」
なにげなく飲んでいるお茶だが、その中にはさまざまな成分が含まれている。その成分分析を行う方法がクロマトグラフィーであり、クロマトグラフという機器を用いる。たとえばお茶の中のカフェインを測る場合には、試料であるお茶をカラムと呼ばれる成分を分離する部品に通す必要があるが、このカラムが同社が扱っていた消耗品である。このクロマトグラフィーは、ドーピング検査や危険ドラッグの検査などにも用いられる非常に重要な技術である。1980年代は、クロマトグラフィーが走りだした頃であり、クロマトグラフという機器と、カラムという消耗品を扱う同社は、ほぼ市場を独占していた。
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絶頂期とITバブルの崩壊

90年代に入り、同社はただカラムを販売するだけでなく、試料をカラムに送り込むチューブの素材や、チューブとカラムをつなぐ継ぎ手部分についてさまざまな提案を行うなど、コンサルティング的な役割を担うようになっていた。さらには試料の流れを制御する装置の半導体製造装置の部品供給に着手。これに成功する。90年代後半は、日の丸半導体という言葉が使われるくらいに、日本がこの分野で躍進した時代であり、同社もこの波に乗った。
2000年、同社は絶頂期を迎える。しかし01年にITバブル崩壊。翌年の売上高は過去最低だった。
当時、営業部長だった木下氏は、地道にカラムを売る業務に就いていた。売り上げに山や谷がない代わりに、石をひとつずつ積んでいくような活動だ。メーカーを回る中で、さまざまな相談を受ける。「“ボトルのアルミキャップを外すのに、使いやすいペンチが欲しい”と言われたとします。一品ものですから、もちろん工具メーカーは引き受けません。そこで、私がヤスリで扱いやすいようにカスタマイズするわけです」
そのようにして築いてきた信頼関係が、 2000年代に入ってシビアな空気に変わった。昵懇な間柄にあると思っていた取引先に適正な見積もりを出したところ、合い見積もりを取ったほかの業者に注文を持っていかれてしまった。「もちろん腹は立ちましたが、自分もいけなかったと思い直しました」
こうしたことは、今後も起こる。そして、価格競争に巻き込まれれば、消耗戦になるだけだ。「コンサルティングしている中で、取引先からの要望は受けられます。しかし、自分たちにしかつくれないものを提供しない限り、10年後のうちはないと考えたんです」
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研究支援商品メーカーへ

研究室向け小型濃縮装置「コンビニ・エバポ」
2003年、研究者の声を受けて、新製品開発に着手する。容器に入れた試料はフタがないと蒸発してしまう。容器にフタをしたままで、試料を取り出せないかと言うのだ。
同社が製薬会社とともに共同開発したプレートシールは、フタにスリットを入れることで、ピペットの抜き差し後に穴が閉じるセルフクロージング機能を持たせている。素材は、ピペットなどの滑り特性がよく、閉じるための弾力性がある。
プレートシールを特許出願し、上市した同社は研究支援商品メーカーの道を歩み始めた。
そして05年、同社は新たな製品開発に着手した。クロマトグラ フィーによる実験の前には、試料の濃縮工程がある。試料から溶媒を飛ばし、濃縮させることで分析の感度が上がる。
ただし、その工程は手間と時間がかかるため、研究員は頭を悩ませていたのだ。液体の中でも、特に水は蒸発しにくかった。
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研究環境に潤いを

真空ボルテックス濃縮
2006年、木下氏が社長就任。
同社はまず、濃縮装置の原理だけを具現化した低価格品をつくった。ただし、販売ルートに乗せるのに苦労した。理化学機器の販売店からメーカーに移行した同社には、ブランド力が備わっていなかったのだ。
同社VFP営業部部長・渡辺洋平氏は、全国を回り、主となる販売代理店を集めて勉強会を開き、濃縮装置をアピール。そして、さらには、どうすればもっと売れる機械にできるかをリサーチした。「10社の代理店の10人のセールスマンに会えば、ひとりについて10人のお客さまがいます。ということは100人のお客さまの声が聞けることになるのです」と渡辺氏。その結果つかんだのは、研究員には女性が多いという事実だった。研究所という地味な配色の環境の中で、女性研究員は何時間も仕事に没頭する。ここに遡及するのだ。いわば質実剛健だった装置のデザインを変える。同社業務管理部部長・真鍋尚美氏は、同じ女性として「うちの装置を入れてもらうことで、少しでも職場を快適にしようというコンセプトのもとに商品の改良を行いました。いってみれば、観葉植物のような役割を持たせたかったんです」
かくしてコンビニ・エバポシリーズは生まれた。カラーも優しい色合いの4色をラインアップ。「4色展開にしたのは、使う人に決めてもらいたかったからです。そうすることで、うちの会社のファンになっていただきたかった」と真鍋氏。省スペースで、いつでもどこでも気軽に使ってもらえる。そう、コンビニエンスストアのように。木下氏は「コンビニ・エバポは、うちがどういう会社なのかを知ってもらうためのアイコンでもあるんです。そのためのデザイン性でもあるわけです」と語る。
コンビニ・エバポは、世界初の濃縮方法、真空式ボルテックス濃縮(VC)により、試料を高温で加熱することなく、しかも濃縮速度を加速している。「コンビニ・エバポは、ほぼ国産部品でできています。海外で安くつくっても、誰が得をするかということです。長い目で見ると、技術の空洞化を生むだけではないでしょうか」
反面、木下氏は販路を広く海外に求めていく。「インターネットなどのインフラが整っている現代、日本に居ながらにして充分に世界に打って出ていけます。日本の製品は高いと言われていますが、性能を理解してもらい、正しく評価を受けることが、次の世代のためにも必要だと考えます」
今回の大賞受賞については「以前、この商品は中小企業優秀新技術・新製品賞優秀賞を、その技術が認められて受賞しています。今回の産業Navi大賞は、実績が評価されてのことと思い、大変嬉しく感じています」
社員一同
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