特別賞 スタジオ タチバナ

代表: 橘 智哉
所在地: 〒259-0201 足柄下郡真鶴町真鶴1200
設立: 1999年4月 従業員: 4名
TEL: 0465-68-3140 / FAX: 0465-68-3140
産業Naviページ: http://www.navida.ne.jp/snavi/100205_1.html
公式ページ: http://st-t.net/

ハイクオリティな美術品を比較的短期間・低コストにて製造可能な技術「綾打ち」の展開

そこにしか存在しない美術品と言えるものは、量には対応が難しく非常に高価です。美術品とは、時代風土を踏まえて作者の感情を表現した唯一無二のものであると考えています。
当事業所の技術「綾打ち」を使うことによって美術品でもある程度の量を制作することが可能となり、より身近な物にも導入できるようになりました。
 

最高にカッコいいものを突き詰める

鍛金との出会い

代表 橘智哉氏
「僕のこれまでの足取りは消去法でした」とスタジオタチバナ代表・橘智哉氏は語る。
運動は少年野球をしていたがプロになれるほどの素質はなかった。その後、モテるかも、とロックバンドに加わるもミュージシャンになる才能は持ち合わせていなかった。むしろ、楽器をつくるほうにセンスを発揮できたかもしれない。そう、橘氏は生来ものづくりに向いていたのだ。
軌道修正のきっかけとなったのは、1980年代後半から90年代前半に制作されたトレンディードラマだった。そこに登場するデザイナーと呼ばれる人々は、ひどくカッコよく目に映った。その影響から宮大工を目指してしまうのが、橘氏の思考の変則的なところだが、こちらも血統が重視されるところから断念。2年間の浪人を経て東京藝術大学に入学する。
当初、木工を専攻するつもりでいた。1〜2学年の間は自由体験できるので、金属に触れてみようと考える。加熱して溶かした金属を鋳型に流し込んで器物や彫刻をつくる鋳金は、大学を卒業すると溶炉など大規模設備が必要なことから、原型をつくるだけになるので、まずは除外した。
鏨で金属に彫刻する彫金に対して、金属を打ってきたえ、板や線、立体などの形状に伸ばしてものをつくる鍛金は「やりながら、途中でくっ付けたり、折り曲げたりといった即興が面白いんですよ」…橘氏は、消去法で選んだ鍛金に、いつの間にかのめり込んでいた。
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彼に頼めば間違いない

綾打ち
好きなことを仕事にするのは難しい。鍛金は、道具を買い集めるだけでも製造業の小さな工場を持つほどの資本がかかる。やめようかとも思ったが「どうしてもやりたかったんです」
まずは工房が必要だ。そこで、実家のある平塚から海岸線に沿って原付バイクを走らせ、家作を持っていそうな相手を一軒一軒当たっていった。伊豆長岡まで来た時だ、300坪くらいの家……というより廃屋を、1カ月3万円で借りられることで話がまとまる。
中古の道具を運び込んではみたものの、仕事はない。木から柿の実をもいだりしていると、近所の人が勤め先の魚工場から傷物を持ってきてくれたりして、どうにか食いつないでいた。
そのうち、個人宅の表札や店舗の看板をつくる仕事をぽつりぽつり受けるようになり、それが口コミで広がってだんだんと椅子、テーブルなども扱うようになった。非効率的であっても、3日間で請け負った店舗の内装の仕事を1週間かけて仕上げた。すると、こんなにやってくれたんだからと、過分に支払ってくれた。彼に頼んだら間違いがないと噂が広がり、なんとか暮らし向きが立つようになった。
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綾打ちはハードでなくソフト

ホテル ザ・リッツ・カールトン東京
そんなふうにして6〜7年が過ぎた頃、藝大から依頼がきて教鞭を執ることになった。そのまま教職に就く道もあった。しかし、制作をしていない自分は、本当の自分でないような気がした。
ドイツのメーカーに直接注文して鍛造機を買って制作現場に戻ることにしたが、プレス振動が発生するため、新たな工房を探さなければならなくなった。もとは石材切り出し会社だった現在の工房は、重機のメンテナンス場である。窓からは真鶴の海が見え、シュノーケリングが息抜きだ。
ハンマーの槌面を模様にしたアートを壁一面に展開する仕事を受けた時、ハンコのように文様を幾つも打ってデザイン化することを思いついた。「綾打ち」の特徴は、彫金でつくった金型に金属プレートを載せ、模様をつくるという量産にも対応可能な技法であることだ。これで、大型作品も従来より制作期間を縮めることができる。
ただし、この模様の入った金属プレートが製品ではない。「依頼者とのキャッチボールによって、相手の要望を聞き出し、こちらの提案を伝え、いいところをミックスすることで、綾打ちにより絵画として構成していきます。綾打ちはハードではなく、見えないものを打っていくソフトなんです」
綾には文様の意があることからの命名だ。東京ミッドタウンのホテル、ザ・リッツ・カールトン東京の45階にあるバーのカウンターをはじめ多数の物件に橘氏の作品が採用されている。
今回の産業Navi大賞特別賞の受賞については「若い学生たちが、とかく“食えない” とぼやくアートが産業として認められたのが嬉しい」と語る。「常になにがカッコいいかを探しています。自分にとって最高にカッコいいものを突き詰めていきたい」
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