奨励賞 有限会社 和心亭豊月

代表取締役: 杉山 幹雄
所在地: 〒250-0522 足柄下郡箱根町元箱根90-42
設立: 1952年12月 従業員: 21名
資本金: 1,000万円
TEL: 0460-83-7788 / FAX: 0460-83-7007
産業Naviページ: http://www.navida.ne.jp/snavi/100198_1.html
公式ページ: http://hakone-hougetu.com

ライフスタイル新たな旅の過ごし方提案〜妊婦さんに優しい宿を目指して〜(マタニティ市場への挑戦)

旅館業において、改装やメンテナンスによる恒常的な設備投資は、集客はもとより、企業の存続の点で重要な要素である一方、経営に与える費用的インパクトは大きな課題を有している。
今回、このような課題の中でも、少ない投資で、顧客ニーズにあった空間、時間の提供をすることで売上向上を目指し、ハード存続の営業戦略を改め、人に焦点をあてた「個」、特にライフスタイルに沿った「過ごし方の提案」を新たな運営基軸に据え、様々な候補から「妊婦さん(マタニティ)の積極的な受け入れ」を選択し商品化。
 

モノからコトへ― 新しいニーズの提案

高品質旅館を目指して

代表取締役 杉山幹雄氏
有限会社和心亭豊月は1952年に現取締役社長・杉山幹雄氏の父が法人化、戦前から箱根神社の参道に杉よし旅館として営んでいた。「もとは、神社の第一鳥居傍に軒を連ねる茶屋の1軒でした」と杉山氏が説明する。
現在の高台に移り、15室50名収容の高級旅館としてコンセプトも新たにオープンしたのは92年のことである。「私どもは普段から高品質旅館という言葉を用いておりますし、また、それを目指しております」
箱根神社本殿と同じく南向きで、正面に屏風山の緑、眼下に芦ノ湖が広がる。全室 “畳文化”で宿泊客を幸せにする和の心を持ち、豊かな月をゆったりと眺め味わってもらおうと名づけた。全室、月に馴染んだ名前になっている。
「中秋の名月は、ちょうど屏風山とその左隣にある二子山の間から午後8時に昇ります。そして芦ノ湖に月光を映しながら刻々と移動して参ります」。70%は首都圏からの客だ。ビル街にいて、夜空を見上げる機会も少ないだろう。「“今日はどんな月かな?” と、普段とは異なる“豊月時間”を心ゆくまで過ごしていただきたいのです」
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客の嗜好変化

嗜好変化に合わせたサービス
かつて旅の途中にあった旅館は、その旅館に泊まるための目的になりつつあった。その時代背景に乗って、和心亭豊月は順調に推移。本格的なモダン懐石を提供する付属の料亭は、料理の味わいとともにプライベ ートな空間を保てる全席個室も好評を得た。駒ヶ岳湯の花沢から引く単純硫黄温泉を24時間満喫できる大人の宿としてスタイルが定着した。1回だけきてもらうのではなく、また訪れてもらえるようにと、料理の献立も月替わりにし、館内のしつらえも季節ごとに変更した。なにより接客には気を配った。それらが功を奏し、リピーター率が40%に及ぶようになった。
ところが2003年をピークに、変化が見られるようになった。同館のように広いロビーで抹茶を点てて客を迎えるようなスタイルから、パブリックスペースを少なくし、個室露天風呂を備えた客室完了型の宿へと客の嗜好が移り始めたのだ。
同館の宿泊費は3万5千円前後。この価格帯の宿に客が求めるものが、個室露天風呂に象徴されるようになった。しかし、オープンから10年経った同館にしてみれば大改築は厳しい時期にあった。それに、ハード依存の営業戦略は限界がある。人に焦点を当てた、ライフスタイルに沿った過ごし方の提案を新たな運営基軸に据えるのだ。それをアピールするのに、隆盛し始めたインターネ ットは適していた。だが、そのアピールするものとはなんだ? 試行錯誤している間にも売り上げは下がり続けた。そして、まだ底の底があった。09年のリーマンショックである。同館は最大の危機を迎えた。
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人を大事にする

客数が減る中でリピーター率は50%に達していた。落ちたのは新規の客だ。では、どの層からこれを呼び込むか?
ゆっくりと温泉旅行を楽しみたくてもできないのは、小さな赤ちゃん連れの家族だ。そうした家族のために、あえて温泉を使わず敷地内地下100mから汲み上げる地下水を使用した貸し切り風呂をつくった。磐境の水と呼ばれる飲料が可能なこの箱根山の天然水は、赤ちゃんにも優しい。そして、この天然水の湯と隣接する箱根神社境内にある安産杉をつなげ「いわばひとつの物語をつくったのです」と杉山氏が語るのが、今回産業Navi大賞奨励賞を受賞したマタニティプランである。
温泉旅行を楽しみたくてもできないのは、妊婦もまた同じ境遇であった。母体を気にする向きから行程に制限も出る中、非日常を求める気持ちに変わりはない。箱根神社安産杉への訪問を無料送迎車で案内するとともに、同プランでは貸し切り風呂の2回の利用特典を設け、施設内エステでは妊娠中の体内リラクゼーションをケア。
個室料亭では食材や調理法にも気を配るのはもちろん、クッションやひざ掛け、客室では抱き枕やベルト式浴衣帯などさまざまな備品を用意し、出産前の癒し旅を提供。妊娠中の温泉旅行は避けるべきという禁忌事項を関係省庁が外したことで人気がさらに加速した。
このプランの企画により「人を大事にするという心得を新たにした」という杉山氏。今回の受賞について「装置産業と言われる旅館業が、モノからコトへ、新しいニーズの提案ができた評価と喜んでいます。これからもお客さまの側に立ち、喜びにつながるプランを提案していきます」
天然水の貸切風呂・箱根神社安産杉・従業員
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