奨励賞 株式会社ブラスト

代表取締役: 下ア 勇生
所在地: 〒212-0011 川崎市幸区幸町2-593 モリファーストビル4F
設立: 1998年4月 従業員: 4名
資本金: 3,550万円
TEL: 050-3786-5086
産業Naviページ: http://www.navida.ne.jp/snavi/100195_1.html
公式ページ: http://www.blst.co.jp/

細胞培養プロセスを「見える化」する簡便かつ低価格な細胞培養イメージング装置

細胞を継続的に培養しながら顕微鏡で観察できる細胞イメージング装置(商品名:顕微鏡インキュベータ)を超コンパクトかつ劇的な低価格で商品化した。
弁当箱大のチャンバーに市販の細胞培養容器を1つ収納し、培養に必要な温度とCO2ガス濃度を温度制御装置とCO2コントローラで安定的に維持できる。顕微鏡にセットしたまま細胞培養できるので、成長過程を動画で記録することも可能。
従来品に比べて非常に小型軽量なシステムで価格は約4分の1、しかも取説を読まなくても良いほど簡単に操作可能。大掛かりで高価な装置が不要で、安く軽く簡単に細胞イメージングを実現する。
 

大きな会社より強い会社に

人の役に立つものづくり

代表取締役 下ア勇生氏
株式会社ブラスト代表取締役・下ア勇氏は、かつて防衛関連の企業でエンジニアとして働いていた。ミサイルや戦車の設計にかかわる仕事をしていたが、かねてより人の役に立つ仕事をしてみたいという思いがあった。 もちろん、その当時の仕事が人の役に立たないと言うつもりはない。けれど、下ア氏の興味の対象は、医療や福祉関係へと強く向いていた。
起業を念頭に置きつつ、医療機器製造会社に転職。手術後の患部のアイシングシステムの開発にかかわる。傷を冷却し、出血やむくみを抑えることで、直りを早くすることを目的とした装置だ。アメリカ製の機械はあったが、高くて大きいものだった。価格を抑え、扱いやすい製品を目指したのだ。
以前勤めていたのが巨大企業で、ほぼ設計だけを専門にしていたのに対して、今度は中小規模だ。生産調達なども含めて、プロジェクトを統括することで「まさにものをつくることが体験できました」と下ア氏は語る。
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挫折

1998年4月、有限会社ブラストを横浜・山下公園近くに立ち上げる。 「ほとんどノリと勢いでした」と笑う。しかし、すぐに仕事が来るわけでもないので、知人のプランの手伝いやコンサルタント的なことをして当座をしのいでいた。
下ア氏の人生が大きく動くのは、ハイパーサーミアシステムの開発に乗り出してからだった。ハイパーサーミアとは、がん治療法のひとつである。温熱療法、高体温療法と呼ばれ、体温を42度程度に上げることによって、正常細胞に影響を与えず、がん細胞を叩く。増殖のコントロールのきかないがん細胞は、成長が早く血管を擁さない。したがって血管の収縮や拡張による温度調整ができず、熱に弱いのだ。 
起業前にアイシングシステムの開発に携わった下ア氏にとって、ハイパーサーミアシステムの開発へと向かうのは自然な流れだった。ハイパーサーミアは、優れた技術と優れた医療があれば、がんに立ち向かえるという好例ではあるのだが、ただしこちらも今あるアメリカの機械は恐ろしく高額であり、操作も難しい。下ア氏はこのハイパーサーミアシステムをもっと安価に、そして操作手順も簡易にしたものを開発した。ところが実用化できない。「ひとりのベンチャーが行うには、挑むものが大掛かり過ぎたんです」
下ア氏を阻んだ壁とは臨床試験である。自らも含め、健常者の実地テストは行えるが、患者相手の試験に必要な巨費と体制が整わない。
2000年、有限会社から増資し、株式会社として浜松町に移転。企業からの委託や共同開発で、リハビリロボットや人工心臓に着手。いずれも、ものをつくりあげる段階まではいくのだが、ここでもやはり臨床試験にたどりつかない。たとえ開発できても、それを実用化できなければ会社は立ち行かなくなる。07年、下ア氏は、すべての試作品、製作機械を処分し、事務所を引き払った。
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これからが本格スタート

顕微鏡インキュベータ
「残ったのは借金だけでした」と下ア氏は苦く笑う。
いや、それだけではない「頭の中には技術もいっぱい残っていました」
ハイパーサーミアシステム開発の際、ガラスドーム越しに患者を目視しながらの熱源確保が必要だった。そこでつくり上げたのがガラスヒーターである。ガラスに非常に薄い金属膜をコーティングすることで、電気を流すとその金属は熱くなり、一体化しているガラスも熱くなる。最初はガラスヒーターだけを受注生産していたが「温度制御する電気部品はないか?」という声が聞かれるようになった。そこで、ガラスヒーターと温度制御装置のパッケージ販売を始めた。
パッケージで特注を受けたりする中で、顕微鏡のステージ上で細胞培養する装置の必要性を知る。培養には、温度とCO2が必要だ。そこで、同社製商品としてリリースしたのが、ガラスヒーターと温度制御器、CO2コントローラからなる顕微鏡インキュベータである。実験や研究機は、あれほど下ア氏を苦しめた薬事法にかかわらずに実用化できるのだ。
今回産業Navi大賞の「奨励賞受賞というのは、これからまだ上に向かってもっと頑張れよという励ましの賞だと思っています」と笑う。「大きな会社よりも強い会社にしたい。大きな岩は大きな力で壊れますが。小さな石は象が踏んでも壊れません。そういうしっかりとした核を持つことが必要。これからが本格スタートなんです」
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