(取材日:2008年5月19日)
もう3年目になるという、緑川社長の同校での講義。
念願叶って潜入取材をさせていただいた。
言葉にすると、固くて仰々しくて、「産」と「学」の間には、なんだかくっついてないイメージがしてしまう「産学連携」。
いろいろな歪みが表面化してきているこのごろの日本社会に、大人の私達が、子供達に何をできるか。
何をすべきか。
こんな気持ちで、デジカメとメモを持って教室入り。
元気な生徒さん達のあいさつ。緑川さんは、今日もベージュトーンのオシャレないでたち。(ねずみ色のスーツ、とか持ってなさそう・・・、15歳から見たら、きっと、ちょいワルなかっこいい大人?)
自己紹介や今日の講義の流れなどのスタートから、自然なのに骨太なお話のトーン。ぶっきらぼう な感は飾らないお人柄のままなのに、15歳の高校生にスムーズに響くであろう言葉を使って話す。そりゃ、もう導入から生徒の気持ち、ワシづかみ。生徒さん、座り姿勢はイマドキだが(決して直立姿勢じゃない)、全員、話をよく聞いている。後ろの席まで。
けずりやすい硬質ウレタンのケミカルウッド10センチ四方の立方体を、カッターや彫刻刀で削って、自由に作りたいものを作ってみる実習。
「テーマは自由。自由な発想でいいんだよ。作りたいもののアイディアが決まったら、えんぴつでケミカルウッドに下がきして。で、削りだしていいよ。はじめ〜〜」
そうは言ってもイマドキの高校生。たるそうだったりしゃべったりテキトーだったりするのだろう・・・なんて思った方は大間違い。
なんと、全員、何作ろうかな〜とうんうん考える。
「鳥にしよっかな」「やっぱ、小田原といえばかまぼこだべ」「あ、おれもかまぼこ思った!」・・・。(かまぼこって・・・、簡単なんじゃあ??と、ひとり笑ってしまった私。)
![]() 立方体の面を生かし中をくりぬいて「檻」に |
![]() タイヤが4本積んであるように |
削り始めると、集中度はさらにアップ。刃物を使っての実習、ケガのないよう自分自身で集中しながらも、ワイワイ声は飛ぶ。間の休み時間も、席も立たず作り続ける子も多い。
顔が撮影できないのが、ほんとうにくやしいほど、皆、真剣。
飛び散った粉は、砂糖より砂より細かく、払っても簡単には取り払えない。でも、誰もそんなこと気にしない。削る、削る。
「ヤバイ、豚の足が取れた!顔だけにしよう!」「魚に見える?」「スライムだぜ〜」・・・
時は過ぎ、残念ながら終了時間。続きは家でやってみてね、余ってるケミカルウッド、あげるから欲しい人は持って帰っていいよ〜と太っ腹な緑川さん。
できあがった作品から、少しずつ選んでみんなで鑑賞。
「でも、どれがいい、わるい、とかじゃない。みんな、どれも、いい。」
緑川さん、本当に嬉しそうな笑顔。
使ったカッターは、きれいに粉を払って先生に返却。きっちりしてる。
![]() 粉の量で、真剣さが伝わりますように |
![]() パルテノン神殿! |
![]() カッターのみでここまで滑らかなハートが |
![]() 掃除前の教室、床も机もすごい |
さっき全員がモノ作りに使ったケミカルウッドをふんだんに使用したからくりに、全員夢中で鑑賞。ちょっと暗くしての鑑賞、大人だったら眠くなるところ、イマドキの15歳、なかなかどうして、立派です。見入ってます。
結果は、失敗回数の減点が響いて惜敗。自然と、誰彼ともなく「あ〜・・・」と声がもれた。悔しいよね!

実習〜DVD鑑賞の後、緑川さんの熱い熱い講義。1度リストラされて、大ピンチ!のくだりで、後ろの席の子まで、表情がマジだ。私語ゼロ。
「このピンチをチャンスと捉えて、会社をつくることにした。今まで、やりたくてもできなかったことを、どんどんやる会社にする、って思ったんだ。モノを作って、みんなとこうして楽しい時間を過ごせるような、そんなことをやれる会社。」
「これからの人生、ピンチが来ることがあっても、それをチャンスと捉えるにはどうしたらいいか。自分のやりたいものがあれば大丈夫。少しずつ今から経験を積んでいけばいいよ。いろいろなものを経験して、自分の『得意』と『苦手』を判断してみよう。触るものの全てが、君達の財産になります。人生の分岐路で、強みを持てるよう、今、勉強しよう。そのためにこの高校がある。」
高校の先生からのリクエストでのこの話題。
「最近、日本の大人は不祥事続きなのは、みんなも知ってるよね。かっこわるいよな?謝るくらいなら、最初から悪いことはやるな、って思うよな。」
耐震偽装問題、食品安全偽装問題、などなど例にとり。
「でもな、みんなと同じくらいの時、今の大人も『悪いことしてやろう』
なんて、思ってなかったんだ。大人になって、変わってしまった。なぜだかわかるかな?そう、『金』がからんでくるから。」
私を含め、ドキッとした方は、大人。
「で、みんなにお願い。日本は資源もないし、大人はこんなだし、将来に希望が持てるかな?って感じだよね。でも、この日本で、みんなはこれから生きていく。どうするか。」
「大人は、考えが変えられない。いくら、『大人が悪いんだから変われよ』って言ってもさ、変われないんだ。君達が変えるんだ。これから積んでいくいろいろな経験を、力にして、将来の日本を作っていってほしい。」
廊下側一番後ろの席に座って、生徒さん達と同じ目線で見、同じ耳の位置で聴いたこのお話は、大人である私にとっても心にずしっと響く。愛情あふれる緑川さんの、言葉に乗せた熱い想いは、15歳のみんなにきっと届いている。
最後、生徒さん全員から、「ありがとうございました!」の挨拶。
授業の後、少ししてから通りかかった廊下から見えた教室。ごみひとつなく、きれいに掃除されていた。
お昼を先生・緑川さんとご一緒しながら、雑談。私が、「あんな授業を高校生の時に受けたかったなあ。」ともらすと、緑川さん曰く、「いやいや、すぐ忘れちゃうってば。高校生なんて、きっとそうだってば。」先生も私も、きっぱり否定しました(笑)。見た目と異なりテレやな緑川さんの、精一杯のお返事なのでした。
だって、今週金曜23日から、高校入学して初の定期テストだっていうのに、「あ〜、も〜、今日は勉強なんてできね〜」と叫んでいた生徒さんがいましたもん。モノ作りの実習授業に興奮してしまって、机に向かう勉強が今日は手につかない。。。そのくらい、15歳の心に響いた日だったのだと思います。
いつか、きっと、この生徒さん達の中から、「第2、第3の緑川社長」が生まれるのだろうな。そしてまた次の世代に、次の次の世代に・・・。こう考えると、今の大人が作ってしまった逆境も力強く跳ね返せる時がくるような気がします。そして、私にもできる「産学連携」が仕事人としてあるんじゃないか。そして、それをまずはやってみよう、と。
この記事を書き、WEBで公開することが、まず、今の私にできる「産学連携」となりました。