同社は福祉振興財団が実施する表彰事業、かながわ「産業Navi大賞2011」奨励賞受賞企業。受賞事業は福祉バイオトイレカーだ。主業務である警備現場でのトイレ確保に困り、対策としてトラックの荷台に簡易トイレを設置したところ、車いすで通りかかった男性から「こんな車があれば、外出しやすくなるね」という声をかけられた。障害者に喜ばれるのであれば、との想いから開発を決めた。
バイオトイレは、排泄物がオガクズで無臭化し、水と二酸化炭素に分解。水を使わないため、下水や汲み取りも不要。無臭で衛生的なうえ、使用後のオガクズは、有機肥料として再利用可能だ。さらに電源は屋根に設置した太陽光パネルで賄い、冷暖房も完備。「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」に適合し、合法的に公道走行が認められている。
今回、受賞から5年が経過し、久しぶりに八木社長を訪ねた。
移動式バイオトイレカーの公用車第一号が決定
神奈川から全国へ そして
実は、北海道苫小牧市への公用車第一号の納車が決定しました。2015年12月に当社のホームページを見た苫小牧市役所からの電話が初めてのコンタクト。バイオトイレカーに興味を持っているとの内容を受け、2016年2月に苫小牧市役所を訪ね、市長をはじめ職員の方々に、東日本大震災の支援活動の際の話を中心に聞いていただきました。同市の“ふくし大作戦!!2016”と題した取り組みとも相まって、「苫小牧市でトイレカーを持つべきだ」ということになり、とんとん拍子で話が進み、契約締結となりました。製造については、日産自動車グループの特殊車両の製造を担う株式会社オーテックジャパンに話を持ちかけたところ、受けていただけることに。同年9月に車両の製造に取りかかり、同年年末に納車が決定しました。当社が発注者となり、日産自動車が受注者となるのですから、画期的なことです。
笹子トンネル天井板崩落事故で関係者のトイレ支援を請け負ったこともあり、NEXCO中日本グループから声がかかり、現在トイレカーを3台貸与しています。順調にいくと、2017年4月以降量産体制になると思います。
また、今後平時には、横浜市、川崎市をはじめとする自治体のイベントに積極的に参加します。障害者の方は、トイレの問題でイベント参加を控えがちですが、トイレカーがあれば安心です。数年かかりましたが、横浜市においては、来年度より市として予算編成をしてイベント時に使用予定です。また、川崎市においても利用者にとって最適な福祉製品のあり方を示した、同市独自の基準「かわさき基準(KIS)」に認証されましたので、これを契機とし横浜市と同様、イベントでの使用を目指します。
苫小牧市への導入後、ここから全国へのトイレカーの発信が今後の一番の重要な任務です。ここで大事なのが、信頼を得るための裏付けなのですが、その意味で「産業Navi大賞」は、大いに利用させていただいています(笑)。「そういう表彰を受けているのだから信用に値する」となるわけです。
また、先日トイレカーを神奈川から全国に発信する布石として、海老名商工会議所、公益財団法人神奈川産業振興センターと経営革新計画を進め、承認を受けました。
昨今、政府が日本のトイレを世界に発信すべく様々な取り組みを進める中、今まさに内閣府に働きかけていることがあるんです。それは、東京オリンピックに100台のトイレカーを準備することです。オリンピック後に、47都道府県に2台ずつ分ければ、災害の時に使用できるレガシー(遺産)になります。
一方、今回トイレカーを製造した株式会社オーテックジャパン、日産自動車においても、これを全国に広めることを考えているようです。今後量産に移っていく可能性もあり、さらなる青写真を海外にも描いているようです。
ここからが面白いところです。神奈川から全国へ、そして世界へ。トイレカーはそれだけのポテンシャルがある事業だと信じています。